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2026.10.30
コラム

脱・「廊下は無駄なスペース」

脱・「廊下は無駄なスペース」

― TOKYOなないろ工房家づくりコラム ―

   そろそろ、わたしたちの家のこと。

はじめての家づくりをやさしくガイドする、心地よい暮らしのために。

 

 

廊下をあえて作ることで家が劇的に快適になる逆説のデザイン

 

コストダウンや限られた敷地を有効活用するために、「廊下を極限までなくした間取り」が近年の家づくりで大人気です。すべての部屋がLDKに直結し、移動距離が短い家は一見すると合理的ティに見えます。しかし、実際に暮らしてみる中で「すべてが直結しているからこそのストレス」に直面するケースが後を絶ちません。あえて「廊下」という名の空間(余白)を設計することが、なぜ今の時代に心地よさをもたらすのか。その逆説的なデザインの価値を紐解きます。

 

  1. すべてがLDK直結する間取りがもたらす「3つのストレス」

廊下を排除し、LDKから直接各部屋や水回りに出入りする間取りには、特有のデメリットが潜んでいます。

 

① 「音とにおい」が家中にダイレクトに伝わる

リビングのテレビの音や話し声、キッチンの換気扇をすり抜ける調理のにおい、さらにはLDKに面したドアの開け閉めによるトイレの流水音まで、家中がワンルーム感覚になることで、音やにおいのプライバシーが失われがちです。

 

② 家族間であっても「プライバシーの境界線」が消える

例えば、夜遅くに帰宅した家族がリビングを通らなければ自分の部屋に行けない、あるいはリビングでくつろいでいる家族の背後を別の家族が横切り続けなければならないなど、お互いの気配が近すぎて逆に落ち着かない環境を生み出します。

 

③ 来客時に「生活空間が丸見え」になる気まずさ

玄関ドアを開けた瞬間、目の前がすぐにLDKや生活スペースである場合、宅配業者や急な来客があった際に対応に困ります。部屋着のまま家族がリビングを横切る動線しかなく、お互いに気を使うシーンが増えてしまいます。

 

  1. 「空間の緩衝材」としての廊下が持つ価値

建築において、廊下は単なる「移動のための無駄な通路」ではありません。音や視線を一度リセットする「空間のクッション(緩衝材)」としての極めて重要な役割を担っています。

 

・心理的なオン・オフの切り替え

パブリックな空間(LDK)から、プライベートな空間(寝室や個室)へ移動する間に「短い廊下」を挟むこと。このワンクッションがあるだけで、脳が自然と「プライベートモード」に切り替わり、心のゆとりが生まれます。

 

・家族の動線と「来客動線」の分離

少しの廊下やホールを挟むことで、お客様を通すルートと、家族がプライベートで動くルートを分けることができます。お互いのプライバシーを守りつつ、生活感をスマートに隠す大人の配慮が可能になります。

 

無駄を削ぎ落とすだけが正解ではない「廊下をなくせば坪数が下がり、コストが抑えられる」というのは事実です。しかし、面積の数字だけに囚われてすべての空間を直結させてしまうと、日々の暮らしの中で「音や視線のストレス」が蓄積していく原因になります。これからの快適な家づくりとは、ただ効率を追い求めるのではなく、あえて適度な「距離感と余白」を残すこと。家族のつながりを大切にしながらも、それぞれのプライバシーと静かな時間を守るために、あえて「廊下」という贅沢なクッションをデザインし直してみませんか?